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ウサビッチやイナズマデリバリーに音をつける

イナズマデリバリーのプロジェクト画面

 

 

こんにちは。サウンド担当の上野大典です。

 

今回はウサビッチやイナズマデリバリーといった映像作品にサウンドを
乗せるときの流れ(個人的なこだわりも)をご紹介したいと思います。

 

ウサビッチやイナズマデリバリーではキャラクターの声も担当しているので、そういう場合はいつも以下の順番で作業しています。

 

 

1. BGMの編集、ジングルなどの追加

まず映像に対してどんなBGMが必要なのかを考えます。
重要な曲(テーマ曲など)は効果音を入れる前にほとんど完成していますので、それらを組み合わせていきます。

 

ジングル制作

ここで演出的に必要だと判断した場合は依頼がなくても自主的にジングルや、ドローンを作ることは珍しくありません。

※ 海外ドラマでは1話ごとに場面に応じたBGMをその都度、新しく作るのが普通なので作曲家のギャラも1曲ごとではなく1シーズン通してになるらしいですね。

 

テンポ計算

BGMをどの場面で鳴らすかを決めたら、次はBGMに合わせてテンポチェンジを入れていきます。

たいていの場合、BGMに合わせてカット割りや動きがついているので、効果音もそれに合わせて鳴らすので、作業をやりやすくするための下準備ですね。

 

BPM=170の曲が話の途中でBPM=130の曲に切り替わるなら、それに合わせてテンポチェンジを入れ、小節の途中で切り替わる場合は端数の拍子記号も入れます。(4/4の曲の「3拍目で別の曲に切り替わる」場合、拍子記号を4/4→2/4→4/4というふうに切り替えます。

 

BPMを曲に合わせて変更する

 

特にイナズマデリバリーでは「メインテーマ」が8分の15拍子、「カーチェイスの曲」が8分の7拍子、「バイザウェイのテーマ」が4拍子と目まぐるしく変わるのでこの作業は重要になります。

地味ですが、この作業をきちんとやっておけば効果音をグリッドにそって並べるだけでBGMに対して16分音符といった音楽的なタイミングで鳴らすことができます。

 

グリッドに合わせて効果音を配置する

 

 

 

 

2. キャラクターの声を録音する

絵コンテでセリフの指定があれば、ロシア語でも英語でもフランス語でもGoogle翻訳で発音を聞いて、しっかり練習してから収録します。

便利になりましたねー。昔は電子辞書でやってましたから。

 

ソノフォニックの録音環境

弊社には1.5畳の録音ブースにマイク、映像を見るためのディスプレイがあるので映像を映しながら声を録音していきます。
セリフ以外の全ての声はキャラクターの表情やアクションに合わせてアドリブで行います。セルフプロデュースのような感覚ですが、しっくりくるまで何度でも録り直します。

 

録音ブースの風景

 

声の加工について

私が本職の声優でないこともあり、録音した声に対して何らかの加工をすることが多いです。非人間系のキャラクターの場合はピッチを変える場合がほとんどで、それらはCubase標準のピッチシフターで変更しています。
声を少し若くしたり、ハリのある元気な声にする場合は1半音高く(「イナズマデリバリー」のヘミングウェイ)、非人間っぽさを出す場合は5半音高く(「イナズマデリバリー」のバイザウェイなど)します。低くすればクッパ大王のような声になりますね。

 

2番目にこれを行うのは音の優先度が キャラクターボイス>効果音>BGM となることが多いので、優先度の高い順番に進めると効率がいいからです。

 

おまけ マリリン・モンローになる方法

ちなみに、演技の段階でしっかり声を作っておけば、オッサン(わたくし)の声をマリリン・モンローの声にすることも簡単にできます。

まず彼女の声(ワーオ♪)をピッチを低く加工して「低くした声(ウゥゥワァァーァオォォウゥゥ)」を、声室まで含めて正確にモノマネして録音した声を元のピッチに戻す、という原始的なやり方です。

 

完成品がこちらです。

なかなかでしょう(ドヤ顔)?

 

 

 

 

 

 

3. 音に動きをつける

Cubaseのオートメーション機能を使って、キャラクターが右にいるときはパンを右に振る、遠くにいるときは音量を下げてリバーブをかける、といった、映像に対してのキャラクター(ミサイルなど動きのある物体も含む)の立ち位置とサウンドの定位を一致させる、という作業を行います。

 

これを後からやろうとするとパンを左右に振り切った時に音が聞こえにくくなったりして、それを修正する作業が出てきてしまって効率が悪くなります。

 

イナズマデリバリーでは「ヘミングウェイ」、「バイザウェイ」とキャラクター1人ずつにボイス×1、効果音×3のトラックをそれぞれ用意し、グループバスに送っていました。

 

実際の作業の流れ

たとえばヘミングウェイが「しゃべりながら左から右に歩いて横切る」場合、最低でも「声」と「足音」(場合によっては「衣摺れ」なども含めて)のトラックそれぞれに、パンを左から右に動かすようなオートメーションを書く必要がありますが、声と足音を同じグループバスに送り、バスに対してパンのオートメーションを書くことで手間を減らすことができます。

 

オートメーションので効果音に動きをつける

 

 

 

 

4. キャラクターに対する効果音を作る

足音やまばたき、殴る音など、キャラクターが発する音はアクションの見栄えをより良くする意味でも重要なものが多いので、声の次に作ります。イナズマデリバリーではカーチェイスシーンがメインのエピソードもあり、その場合は「車の音」をキャラクターの音よりも優先してつけたりします。

 

リズム優先

動きに効果音をつける場合に個人的にこだわっているのは映像のタイミングよりも曲のリズムに合わせることを優先する、ということです。多少動きとずれていてもBGMに対して音楽的な(16分音符単位など)タイミングで効果音を鳴らすことでアクションがBGMにしっかりリンクしたように見せることができます。

 

富岡監督からは「効果音だけを再生しても音楽として成立している」というお褒めの言葉をいただいたことがあります。

こだわっている部分なので非常に嬉しかったです!

 

ハリウッド映画の効果音

そういえば、専門学校時代に先生から映画「ブルース・ブラザーズ」の効果音にまつわる話を聞きました。

たしか ”冒頭で主人公たちがブルースモービルに乗ってカーフェリーからジャンプするシーンで、BGMと「踏切のベル」よく聞いているとがベルがBGMに対して2拍3連のリズムで、しかも短三度の音程(ブルーノート)で鳴っている” というもので、すごく感銘を受けました。

 

Native Instrumentsなど、海外のプラグインメーカーの商品説明などを見ているとナレーションですらラップのようにBGMにシンクしているので脱帽します。

トゥデーイ(ズン)イントロ(チャッ)デュース(チキ)アッ(チキ)ニュー(ズン)プラーグイーンみたいな感じです。

 

 

 

 

5. 機械音などの背景音を作る

作るとはいってもあくまで背景音なので、聞こえなくても成立する場合はできる限り省略してしまいます。

 

 

効果音はほとんどモノラル

声やBGMのために音響的なスペースを「空けて」おかなければなりませんが、効果音がステレオのままだとそれだけ多くのスペースを食ってしまうので、基本的にはモノラルにしています。

あくまで「部品」なので、イコライザーなどで必要ない帯域もばっさりカットして、リミッターもかなりしっかりかけています。

 

目の前で起きていることの音だけを鳴らす

リアリティよりも演出の意図(見ている人にどんな感情を起こさせるか)の方が大事なので、画面に映っていないものや人の音は極力小さくします。

「遠くから飛んでくるミサイルの飛行音(予兆の音)」の音は鳴らしますが、大きな音のはずの「爆発音」であっても、画面に映っていなければ小さくします。

 

 

すべての音をつけ終わったら2ミックスに書き出して、マスタリング用のプロジェクトに送り、音量などを整えて納品となります。

放送時やDVDへのオーサリングなどは専用のエンジニアさんがいるので、そちらの方々が扱いやすいように、常に一定の音量(音圧)で提出するように心がけています。

 

 

以上がサウンド制作の大まかな流れです。

作品で鳴っている音を全て担当させていただける機会は少ないですが、ギャグ要素やシリアスな要素をサウンド全体で演出できるのは最高に楽しいです!

 

それではまた。

フィジカルコントローラーでのモニターコントロール

モニターコントローラーの画像

こんにちは。サウンド担当の上野大典と申します。

今回はミキシング&マスタリングで特に重要な2つの操作を手元でコントロールできる方法をご紹介します。

 

 

用意するもの

・フィジカルコントローラー(コントロールサーフェス)

・またはMIDIキーボード(MIDI情報を送信できるパッドなどのついたもの)

 

これを専用のモニターコントローラーでやるとすると数万円〜と高くつきますが、今回ご紹介する方法ならオーディオ信号がモニターコントローラーを通らないので音質的にも有利なのです。

※この記事はコントロールルーム機能を使うので「CubasePro」ユーザー専用になります。

 

 

A/B 比較

※まず、Cubaseのコントロールルームが有効になっていない人は[スタジオ] > [オーディオコネクション] からコントロールルームを有効にして進めてください。

Cubase Control Roomの設定

1. リファレンス専用のオーディオトラックを作る

このリファレンス専用トラックの出力先は「No Bus」を選択して、メインの「Stereo Out」からは音が出ないようにします。

2. リッスンバスに送る

リファレンス用のオーディオトラックにラフミックスのオーディオファイルを読み込み、「L」の文字の「Listen」ボタンをオンにして、信号をリッスンバスに送るようにします。(以降、この「Listen」ボタンは解除しないでください)

この状態では再生してもラフミックスの音がStereo Outには送られていないので、なにも聞こえないと思います。

リッスンバスの設定

3. リッスンバスをオンにする

Cubaseのメニューから「スタジオ」→「Control Room」を選んでコントロールルームミキサーを表示させます。

コントロールルームミキサーの「Main」をクリックして表示を拡大して、「LE」というボタンをクリックしてリッスンバスをオンにしてみましょう。

リファレンス用のオーディオトラックの信号が聞こえたでしょうか?

 

もしリファレンス音源がメインミックスと混ざってしまう場合は、「Listen Dim レベル」を一番最小(無音)にしてください。こうするとリッスンバスをオンにした時にメインミックスが完全にミュートされ、ラフミックスだけを聞くことができます。

 

4. フィジカルコントローラーに機能をアサインする

Cubaseのメニューから「スタジオ→スタジオ設定(デバイス→デバイス設定)」を開いて、リモートデバイスからお使いのフィジカルコントローラーを選び、任意のパッドなどに以下の機能をアサインします。

デバイスは「コマンド」を選択、チャンネル/カテゴリは「Control Room」を、値/操作には「出力のListenをオン/オフ」を選択すると、アサインしたパッドからリッスンバスのオン、オフを操作できるようになります。

フィジカルコントローラーの設定

 

アサインしたパッドを叩いた時にコントロールルームミキサーの「LE」のオン、オフが切り替わるか確認してください。

これでStereo Out(あなたのミックス)とリッスンバス(ラフミックス)がワンタッチで切り替えられるようになりました!

 

任意のショートカットキーに「Control Room」→「出力のListenをオン/オフ(LE)」をアサインするのもいいですね。

この方法ならフィジカルコントローラーも必要ありません。

 

※注意点

リッスンバスをオンにしたことを忘れていると「あれ?メインミックスの音が出ない!?」となってしまうことです。

そういう時は冷静にコントロールルームミキサーのリッスンバスがオンになっていないか確認しましょう。

 

 

ステレオ/モノの切り替え

今度はワンタッチで「ラップトップPCやスマホのスピーカーで聞いた場合」をチェックできるようにしたいと思います。

 

1. モノラル確認用のCUEを作る

まずCubaseのメニューの「スタジオ」 →「オーディオコネクション」→「Control Room」を選びます。

左上の「チャンネルを追加」をクリックして「Cue を追加」を選択します。

名前は「Cue 1」のまま、構成は「Mono」にしましょう。 ※デバイスポートは「未接続」のままで大丈夫です。

CubaseのControl Roomの設定2

これでモノラルの状態を確認するためのキューができました!

 

2. 安物スピーカーの音質を再現する

このキューにインサートエフェクトをかけて低域をばっさり切ってしまい、スマホやラップトップPCのスピーカーや、iPhone付属のEarPodを再現してみましょう。

 

コントロールルームミキサーの下にある「Insert」タブを選択します。

さきほど作った「Cue 1」を選択すると、インサートエフェクトスロットがずらっと出てきますので、ここに「Studio EQ」を読み込みます。

バンド1で「CUT」を選択し、200Hz以下をカットします。

Cueの設定

コントロールルームミキサーでソースに「C1」を選択すると、今設定した「Cue1」の音を聞くことができます。

モノラルで低域のない音になりましたか?

 

3. フィジカルコントローラーの設定

それから、お使いのフィジカルコントローラーの任意のパッドに以下の機能をアサインします。

 

「デバイス」=「VST Control Room」に、「チャンネル/カテゴリ」=「Control Room」に、「値/操作」=「Cue 1を選択」、「フラグ」=「プッシュボタン&切換にチェック」を選択すると操作できるようになります。

キーボードショートカットの場合は任意のキーに「Control Room」→「出力のListenをオン/オフ(LE)」をアサインします。

 

これでコントロールルームミキサーのモニターソース「Mix(あなたのミックス)」 と 「C1(スマホミックス)」 がワンタッチで切り替えられるようになりました!

 

※注意点

モニターソースを切り替えたことを忘れていると「あれ、音が変!?」とびっくりすることです。

そういう時は冷静にコントロールルームミキサーのモニターソースが「C1」になっていないか確認しましょう。

 

それではまた。

【業界最速!?】インサートエフェクトを素早く呼び出すコツ

インサートエフェクトのアイキャッチ画像

 

 

こんにちは。サウンド担当の上野大典と申します。

 

Cubaseが最近バージョンアップして9.5になりましたね。

新機能の一つとしてインサートスロットが今までの倍の「16」に増えたことで、ようやく理想のプラグインチェインが完成したので、嬉しさのあまり記事にまとめました。
ギタリストのペダルボード自慢みたいになってしまいそうですが、きっと役にたつと思います!

 

俺俺プラグイン・チェイン

モノづくりにおいて、必要なものにすぐに手が届くということは大事なことです。
プラグインエフェクトも、本当に使いやすい、自分が把握しているものだけを厳選しておけば決断も早く、思いついたアイデアをすぐに試せる、理想的な環境で作業できると思います。

 

さて、私はオーディオトラックでもインストゥルメントトラックでも、インサートエフェクトには常に以下の16個を読み込んでいます。
(L1とSSL以外は全て、バイパスではなく、オフにしています。)

ほとんどがオフになっているのに16スロット全て埋めているのが無駄なように思えますが、こうすることでプラグインを選ぶのが劇的に早くなるのです。

 

俺俺プラグイン・チェイン

プラグインを16個も一度に読み込むので、ロードが早くて(VST3に対応している)動作が安定していているWavesのプラグインだけを読み込んでいます。

 

各スロットに役割を決めておく

例えば10番のスロット「RDeEsser」をクリックすると、、、

あらかじめフォルダに分類して絞り込んであるので、同じ系統(カット用のイコライザー)のプラグインだけが候補に上がります。

 

カテゴリーで絞り込んで素早く呼び出す

 

同様に1〜16番まですべて役割が決まっていて、それぞれのスロットをクリックすれば役割に応じたプラグインだけが出てくるので、迷わずに早く選ぶことができます。

Cubaseはプラグイン名で検索することもできるんですが、プラグイン名がバラバラで「EQ」と検索しても全部のEQ(イコライザー)は見つかりません。

しかしフォルダー名に「EQ」と名前をつけておけばそのフォルダーのプラグインは全部見つかります。

 

これはCubaseのプラグインマネージャーで16スロットぶんのフォルダを用意し、それぞれに使うプラグインを絞って入れておくことで実現できます。

 

 

ここから先は16個のスロット一つ一つの解説なのでむやみに長いです、、、

あくまで俺俺チェインなので参考にならないかもしれませんが、エフェクトのつなぐ順番としては基本に忠実なので、きっと役に立つと思います!

 

1 & 2番のスロット

最初にサチュレーション系のプラグインがきます。「歪みは複数のプラグインで少しずつ足す方が音がいい(by チャド・ブレイク)」という理由で2スロット用意しています。

歪みのバリエーションとしてビットクラッシャーなどもこの位置ですね。細かい処理をやった後にローファイにしても意味がないので、かけるなら最初がいいと思います。

サチュレーションで音の密度を高くしたり、ローファイエフェクトで粒を荒くして引っ込めたりして前後の距離感を出せるので、選択肢は多いほうがいいと思います。

 

3番のスロット

ピッチシフターや飛び道具的なエフェクトはここでかけます。Native Instruments Reaktor FXやGuitar Rigなどを使いますが、最近面白いと思ったのはPolyVerse Manipulatorで、フォルマントやピッチをいじれて完全に別次元にまで音を変えられます!

 

4番のスロット

ゲートです。不要な余韻をばっさりカットすることでスペースを空けます。Waves C1 Gateはスレッショルド値をかなり小さめに設定できるので重宝しています。

(スレッショルド値の最小値を-60dbまでしか設定できないプラグインも多いんです)

 

5番のスロット

ここにはWaves L1を固定で挿しています。プロジェクト全体のゲイン管理という意味で、ここで0dB以上のピークだけを削って-18dBまで下げて6番以降に送っています。

 

6番のスロット

Wavesシグネチャーシリーズなどのプラグインがきます。これらの優秀なプラグインを挿すことでトラック全体のトーンを8割がた仕上げることができます。

Wavesシグネチャーシリーズで1ついえるのは、特にベースとドラムは同じエンジニアのプラグインをセットで使った方がいい、ということです(ドラムとベースのミックスを別々のエンジニアに頼まないでしょう(笑))。

 

7番のスロット

ここには固定でWaves SSL E-channelを挿しています。チャンネルストリップならなんでもいいんですが、R-Channel は若干重く、UAD SSD Channelはたくさん挿せないのでSSLに落ち着きました。

 

8番のスロット

ここは小さい音だけを持ち上げられるMV2が基本なのですが、ガッツのあるロックな感じが欲しい時に8+9番を(Waves CLA3A+CLA76)の組み合わせも最高にかっこいい音になります。

 

9番のスロット

歪みを得やすいコンプレッサーを主に挿しています。パラレルコンプレッションが必要な場合にはNative Instruments Supercharger GT、DSPに余裕があればUAD Enpirical Lab Fatso Sr.を使います。

 

10番のスロット

ディエッサー(Waves RDeEsser)か、カット用のイコライザーとしては-30dBもカットできて低域の位相が乱れない(歪まない)ので Waves LinEQ Broad Bandを主に使います。整えるという意味ではWaves F6などのダイナミックイコライザーが最高なのですが、F6にはアナライザーがついておらず、iZotope EQはすごく重いので要所要所で、という感じですね。

 

11番のスロット

基本はWaves Vitamin で周波数帯域別のエンハンス処理とステレオイメージを同時に調整しますが、音にパンチが欲しい場合、前に出したいパートにはUAD API 550A、Pultech EQP-1Aを 、生楽器の高域を綺麗に持ち上げたいときはUAD Neve 1081などを使っています。

 

12番のスロット

フェーダー前のリミッターとして、Waves Smack Attack を固定で挿しています。トランジェントを調整しつつ完全にピークを抑えられるので非常に気に入っています。

ここまでが「プリフェーダー」で、13番以降のエフェクトをポストフェーダーにしています。

 

13番のスロット

空間系&揺らし系、フィルターなどのスロットです。ほとんどCLA Effectsで済んでしまいますが、Native Instruments GuitaRigの中のストンプエフェクトなども重宝します。

 

14番のスロット

こちらも空間系です。13番だけでは足りない場合にこちらを使います。

 

15番のスロット

サイドチェイン・コンプレッサー専用のスロットです。空間系の後にかける方がキレがいいのでこの順番です。RCompressorか、四つ打ちの曲限定ならNicky Romero Kick Start がオススメです。

 

16番のスロット

最後にステレオの広がりをここで調整するためにステレオイメージャーがきます。最後に挿すことで空間系のエフェクトも含めてステレオの幅を調整したり(Waves S1)、センターだけを無くしてボーカルやキックのスペースを空ける(Waves Center)といったこともできます。

 

Cubase9以前の8スロットしかない場合はこんな感じでした。今の16スロットに慣れるともう戻れないですね〜

インサートスロットが8スロットだけだったころ

 

 

Wavesは1年中セール状態なのでシグネチャーシリーズも、ほぼいつでも69〜99ドルの範囲で買えます。クリス・ロード・アルジとジャック・ジョセフ・プイグ、トニー・マセラティを揃えたらどんな楽器に対しても必ず8割以上完成させられます。

そしてシグネチャーシリーズに「あと一声!」という細かい調整が必要な場合、たいていはDAW付属のエフェクトだけで十分だったりします。特にStudio Oneは付属のエフェクトが非常に良くできているのでそう思います。

 

それではまた。

【マスタリングに送る前に】ラウドネスメーターの読み方と適切な音圧とは?

マスタリングのイメージ画像
こんにちは。サウンド担当の上野大典と申します。

今回はCubaseでの「音圧レベルの読み方」について書きたいと思います。

 

マスタリングに送る前に大きすぎる音量(完成品の波形が塗りつぶされて真っ黒になっているような)で送ってもエンジニアさんは何もできません。

最終的にいい音に仕上げるためには、適度な音量でミックスダウンしてマスタリングエンジニアさんに送る必要があります。

ここでは適度な音量で送るための設定方法を見ていきましょう。

ラウドネスメーターを表示させる

Cubaseのメニューから「デバイス(スタジオ)」→「Control Room」を選んでコントロールルームミキサーを表示させます。

上のタブで「メーター」、下のタブで「ラウドネス」を選ぶと「ラウドネスメーター」を表示させることができます

「Integrated(1曲全体の平均音圧レベル)」が-18LUFS以下で、1曲を通して「Short-Term(3秒くらいの範囲の音圧レベル)」が-14LUFSを超えないのであれば、ミックスダウンしたオーディオの音量が大きすぎることはありません。ピークレベルもおそらく-6dB前後に納まるはずです。

マスタリングの時に瞬間的なピークは潰してしまうので、明らかに音が割れたりしていないのであれば、ピークレベルが0dBを超えてもあまり気にしなくていいです。

 

 

 

ラウドネスメーターの設定

 

書き出す時のサンプリングレートはなんでもいいですが、必ずビット深度は「32bit」にしましょう。

ディザリングなどはマスタリングのときにかけるのでオフにしましょう。

 

世界標準のような規格があるわけではないので、私は特に指定をいただかなければマスタリング後の平均音圧レベルが「-16.5LUFS」くらいになるように納品しています。

もちろんご要望があれば大きな音で納品することもできますよ!

 

それではまた。

【最重要】ゲイン管理について

ヘッドフォンのイメージ画像

 

こんにちは。サウンド担当の上野大典と申します。

今回は「ゲイン管理」と称して、個々のトラックからマスターバスに至るまでの、音量の管理方法をご紹介したいと思います。

 

ゲイン管理

ざっくりいえば「大きすぎない、適切な音量で最初から最後まで作業する」ということです。

プラグインエフェクトは大きすぎる音量を受け取ると意図しない歪みが生まれ、それが積み重なると最終的にあなたのミックスは飽和して聴きづらいものになってしまいます。

 

それでは早速、個々のトラック〜マスターバスという順番に設定を考えていきましょう。

 

個々のトラック

私は作曲の段階からインストゥルメントでもオーディオトラックでも、インサートエフェクトとして、全てにリミッター(私の場合はWaves L1)を挿しています。このリミッターは音圧を稼ぐ目的ではないのでスレッショルドは-0dB、Ceiling(アウトプット)を-18dBに設定しています。

 

ここでの目的は「プラグインの入力部分で歪みを発生させない」ということです。

最終的な音量はフェーダーで-18dB下げるのと一緒なのですが、大きく違うのはリミッターより後に挿しているプラグインエフェクトに-18dBの音量で信号を送ることができる、という点です。

こうすれば0dBを超えるようなピークだけを確実に削りつつ、個々のトラックのエフェクトも大きすぎない音量で信号を受け取るので、プラグインの入力部分で不要な歪みは発生しません。

 

リミッターの設定

 

マスターバス

世界的に有名なミキシングエンジニアのクリス・ロード・アルジさんはミックスの最初から最後までずっと、マスターバスにはいつも同じ設定のコンプレッサーをかけていました。

彼によると「マスターバスのコンプレッサーは必ず同じ設定で、ゲインリダクションは必ず-3dB以内に納まるようにしている」そうです。

以前はSSL G Channel Mixer(今はFocusriteのRED)で以下のような設定のようです。

  • レシオ=2:1
  • アタック=10ms
  • リリース=オート

ミックス全体の音量にもよりますが、スレッショルドは-24dBくらいに設定しておくといいと思います。

 

言い換えれば、この設定でゲインリダクションが-3dBを超えるようなら音がでかすぎるということですね。

どうしても曲を作っていたりミックスをしている最中には、どんどん音を足したりして全体の音量も大きくなりがちですが、あらかじめ制限をかけておくことで、際限なく大きくなることを防ぐことができます。

 

 

 

 

※マスターにコンプレッサーをかける方法

マスターに挿す重要な役割なのでバスコンプレッサーには高性能のものを使うべきですが、ひとまずCubase付属のコンプで使い方をご紹介します。

DAWのマスターアウトにコンプレッサーをインサートで挿して、以下のセッティングにして、いつでもゲインリダクション量を確認できるように画面のどこかに置いておきます。

・ スレッショルド=-24dB
・ レシオ=2:1
・ アタック=10ms
・ リリース=オート

この状態でドラムキット全体とベース、ボーカルを同時に鳴らしてみましょう。

ゲインリダクション量の見え方の例として、Waves RCompressorの画像も一緒に載せておきます。

 

マスターバスコンプレッサーの設定

 

キックやスネアが鳴るタイミングで「ビクッ、ビクッ」と、瞬間的に-3dBを超える程度なら問題ありませんが、ずーっと-3dBあたりで張り付いているようなら全体を下げましょう。

一番メインとなるドラムとベースとボーカルを同時に鳴らして-3dB以下におさまっているなら楽器を増やしていっても音が飽和することはないでしょう。

また、どんなコンプレッサーでもゲインリダクションが-3dB程度であれば「音を整える」好ましい動作をしてくれます。

 

以上が私のオススメする「ゲイン管理」です。
ちょっと面倒ですが、最初にやっておけばクリアな音質のまま仕上がると思いますので、オススメです!

私は特に指定をいただかなければマスタリング後の平均音圧レベルが「-16.5LUFS」くらいになるように納品しています。

(もちろんご要望があれば大きな音で納品することもできますよ!)

 

注意点

これをやる前にCubaseのメディアベイ、オーディオパートエディタの試聴(プレビュー)の音量をかなり下げておいたほうがいいです。
加えて、PCの警告音やiTunes、ブラウザなどの音量がマックスになっていたら、それも半分以下まで下げておいたほうがいいです。
このゲイン管理を済ませるとCubaseのマスター音量は小さくなるので必然的にモニター音量は上げることになります。しかし、プレビューで聞くサンプリングCDの音素材やYouTubeなどの音源は大きいままなので、ビックリすることになります。

 

俺俺マスターバス設定

最後に、クリス・ロード・アルジさんを参考にして作ったマスターバスの設定もご紹介させてください。

EQP-1Aでこのマスターバスに合わせてミキシング(ベースとキック以外はバッサリとローカットする)をする必要があるんですが、パンチのあるミックスに迷いなく仕上げられるので非常に気に入っています!

 

Slate Digital VBC Grey(コンプレッサーSSL G-BusComp)

アタック=10、リリース=オート、スレッショルド=-16dB、レシオ=2:0、HPF=75Hz

Slate Digital VBC Red(コンプレッサーFocusrite RED)

アタック=10、リリース=オート、スレッショルド=-24dB、レシオ=1.5:0、HPF=75Hz

ドライブ=5.0、ゲイン=+2.0dB

UAD Pultech EQP-1A(イコライザー)

という順番で、コンプレッサー2つがそれぞれ-3dB以上リダクションしないようにミックスしています。

 

独自のマスターバスのエフェクトチェイン

それではまた。