フィジカルコントローラーでのモニターコントロール

モニターコントローラーの画像

こんにちは。サウンド担当の上野大典と申します。

今回はミキシング&マスタリングで特に重要な2つの操作を手元でコントロールできる方法をご紹介します。

 

 

用意するもの

・フィジカルコントローラー(コントロールサーフェス)

・またはMIDIキーボード(MIDI情報を送信できるパッドなどのついたもの)

 

これを専用のモニターコントローラーでやるとすると数万円〜と高くつきますが、今回ご紹介する方法ならオーディオ信号がモニターコントローラーを通らないので音質的にも有利なのです。

※この記事はコントロールルーム機能を使うので「CubasePro」ユーザー専用になります。

 

 

A/B 比較

※まず、Cubaseのコントロールルームが有効になっていない人は[スタジオ] > [オーディオコネクション] からコントロールルームを有効にして進めてください。

Cubase Control Roomの設定

1. リファレンス専用のオーディオトラックを作る

このリファレンス専用トラックの出力先は「No Bus」を選択して、メインの「Stereo Out」からは音が出ないようにします。

2. リッスンバスに送る

リファレンス用のオーディオトラックにラフミックスのオーディオファイルを読み込み、「L」の文字の「Listen」ボタンをオンにして、信号をリッスンバスに送るようにします。(以降、この「Listen」ボタンは解除しないでください)

この状態では再生してもラフミックスの音がStereo Outには送られていないので、なにも聞こえないと思います。

リッスンバスの設定

3. リッスンバスをオンにする

Cubaseのメニューから「スタジオ」→「Control Room」を選んでコントロールルームミキサーを表示させます。

コントロールルームミキサーの「Main」をクリックして表示を拡大して、「LE」というボタンをクリックしてリッスンバスをオンにしてみましょう。

リファレンス用のオーディオトラックの信号が聞こえたでしょうか?

 

もしリファレンス音源がメインミックスと混ざってしまう場合は、「Listen Dim レベル」を一番最小(無音)にしてください。こうするとリッスンバスをオンにした時にメインミックスが完全にミュートされ、ラフミックスだけを聞くことができます。

 

4. フィジカルコントローラーに機能をアサインする

Cubaseのメニューから「スタジオ→スタジオ設定(デバイス→デバイス設定)」を開いて、リモートデバイスからお使いのフィジカルコントローラーを選び、任意のパッドなどに以下の機能をアサインします。

デバイスは「コマンド」を選択、チャンネル/カテゴリは「Control Room」を、値/操作には「出力のListenをオン/オフ」を選択すると、アサインしたパッドからリッスンバスのオン、オフを操作できるようになります。

フィジカルコントローラーの設定

 

アサインしたパッドを叩いた時にコントロールルームミキサーの「LE」のオン、オフが切り替わるか確認してください。

これでStereo Out(あなたのミックス)とリッスンバス(ラフミックス)がワンタッチで切り替えられるようになりました!

 

任意のショートカットキーに「Control Room」→「出力のListenをオン/オフ(LE)」をアサインするのもいいですね。

この方法ならフィジカルコントローラーも必要ありません。

 

※注意点

リッスンバスをオンにしたことを忘れていると「あれ?メインミックスの音が出ない!?」となってしまうことです。

そういう時は冷静にコントロールルームミキサーのリッスンバスがオンになっていないか確認しましょう。

 

 

ステレオ/モノの切り替え

今度はワンタッチで「ラップトップPCやスマホのスピーカーで聞いた場合」をチェックできるようにしたいと思います。

 

1. モノラル確認用のCUEを作る

まずCubaseのメニューの「スタジオ」 →「オーディオコネクション」→「Control Room」を選びます。

左上の「チャンネルを追加」をクリックして「Cue を追加」を選択します。

名前は「Cue 1」のまま、構成は「Mono」にしましょう。 ※デバイスポートは「未接続」のままで大丈夫です。

CubaseのControl Roomの設定2

これでモノラルの状態を確認するためのキューができました!

 

2. 安物スピーカーの音質を再現する

このキューにインサートエフェクトをかけて低域をばっさり切ってしまい、スマホやラップトップPCのスピーカーや、iPhone付属のEarPodを再現してみましょう。

 

コントロールルームミキサーの下にある「Insert」タブを選択します。

さきほど作った「Cue 1」を選択すると、インサートエフェクトスロットがずらっと出てきますので、ここに「Studio EQ」を読み込みます。

バンド1で「CUT」を選択し、200Hz以下をカットします。

Cueの設定

コントロールルームミキサーでソースに「C1」を選択すると、今設定した「Cue1」の音を聞くことができます。

モノラルで低域のない音になりましたか?

 

3. フィジカルコントローラーの設定

それから、お使いのフィジカルコントローラーの任意のパッドに以下の機能をアサインします。

 

「デバイス」=「VST Control Room」に、「チャンネル/カテゴリ」=「Control Room」に、「値/操作」=「Cue 1を選択」、「フラグ」=「プッシュボタン&切換にチェック」を選択すると操作できるようになります。

キーボードショートカットの場合は任意のキーに「Control Room」→「出力のListenをオン/オフ(LE)」をアサインします。

 

これでコントロールルームミキサーのモニターソース「Mix(あなたのミックス)」 と 「C1(スマホミックス)」 がワンタッチで切り替えられるようになりました!

 

※注意点

モニターソースを切り替えたことを忘れていると「あれ、音が変!?」とびっくりすることです。

そういう時は冷静にコントロールルームミキサーのモニターソースが「C1」になっていないか確認しましょう。

 

それではまた。

【業界最速!?】インサートエフェクトを素早く呼び出すコツ

インサートエフェクトのアイキャッチ画像

 

 

こんにちは。サウンド担当の上野大典と申します。

 

Cubaseが最近バージョンアップして9.5になりましたね。

新機能の一つとしてインサートスロットが今までの倍の「16」に増えたことで、ようやく理想のプラグインチェインが完成したので、嬉しさのあまり記事にまとめました。
ギタリストのペダルボード自慢みたいになってしまいそうですが、きっと役にたつと思います!

 

俺俺プラグイン・チェイン

モノづくりにおいて、必要なものにすぐに手が届くということは大事なことです。
プラグインエフェクトも、本当に使いやすい、自分が把握しているものだけを厳選しておけば決断も早く、思いついたアイデアをすぐに試せる、理想的な環境で作業できると思います。

 

さて、私はオーディオトラックでもインストゥルメントトラックでも、インサートエフェクトには常に以下の16個を読み込んでいます。
(L1とSSL以外は全て、バイパスではなく、オフにしています。)

ほとんどがオフになっているのに16スロット全て埋めているのが無駄なように思えますが、こうすることでプラグインを選ぶのが劇的に早くなるのです。

 

俺俺プラグイン・チェイン

プラグインを16個も一度に読み込むので、ロードが早くて(VST3に対応している)動作が安定していているWavesのプラグインだけを読み込んでいます。

 

各スロットに役割を決めておく

例えば10番のスロット「RDeEsser」をクリックすると、、、

あらかじめフォルダに分類して絞り込んであるので、同じ系統(カット用のイコライザー)のプラグインだけが候補に上がります。

 

カテゴリーで絞り込んで素早く呼び出す

 

同様に1〜16番まですべて役割が決まっていて、それぞれのスロットをクリックすれば役割に応じたプラグインだけが出てくるので、迷わずに早く選ぶことができます。

Cubaseはプラグイン名で検索することもできるんですが、プラグイン名がバラバラで「EQ」と検索しても全部のEQ(イコライザー)は見つかりません。

しかしフォルダー名に「EQ」と名前をつけておけばそのフォルダーのプラグインは全部見つかります。

 

これはCubaseのプラグインマネージャーで16スロットぶんのフォルダを用意し、それぞれに使うプラグインを絞って入れておくことで実現できます。

 

 

ここから先は16個のスロット一つ一つの解説なのでむやみに長いです、、、

あくまで俺俺チェインなので参考にならないかもしれませんが、エフェクトのつなぐ順番としては基本に忠実なので、きっと役に立つと思います!

 

1 & 2番のスロット

最初にサチュレーション系のプラグインがきます。「歪みは複数のプラグインで少しずつ足す方が音がいい(by チャド・ブレイク)」という理由で2スロット用意しています。

歪みのバリエーションとしてビットクラッシャーなどもこの位置ですね。細かい処理をやった後にローファイにしても意味がないので、かけるなら最初がいいと思います。

サチュレーションで音の密度を高くしたり、ローファイエフェクトで粒を荒くして引っ込めたりして前後の距離感を出せるので、選択肢は多いほうがいいと思います。

 

3番のスロット

ピッチシフターや飛び道具的なエフェクトはここでかけます。Native Instruments Reaktor FXやGuitar Rigなどを使いますが、最近面白いと思ったのはPolyVerse Manipulatorで、フォルマントやピッチをいじれて完全に別次元にまで音を変えられます!

 

4番のスロット

ゲートです。不要な余韻をばっさりカットすることでスペースを空けます。Waves C1 Gateはスレッショルド値をかなり小さめに設定できるので重宝しています。

(スレッショルド値の最小値を-60dbまでしか設定できないプラグインも多いんです)

 

5番のスロット

ここにはWaves L1を固定で挿しています。プロジェクト全体のゲイン管理という意味で、ここで0dB以上のピークだけを削って-18dBまで下げて6番以降に送っています。

 

6番のスロット

Wavesシグネチャーシリーズなどのプラグインがきます。これらの優秀なプラグインを挿すことでトラック全体のトーンを8割がた仕上げることができます。

Wavesシグネチャーシリーズで1ついえるのは、特にベースとドラムは同じエンジニアのプラグインをセットで使った方がいい、ということです(ドラムとベースのミックスを別々のエンジニアに頼まないでしょう(笑))。

 

7番のスロット

ここには固定でWaves SSL E-channelを挿しています。チャンネルストリップならなんでもいいんですが、R-Channel は若干重く、UAD SSD Channelはたくさん挿せないのでSSLに落ち着きました。

 

8番のスロット

ここは小さい音だけを持ち上げられるMV2が基本なのですが、ガッツのあるロックな感じが欲しい時に8+9番を(Waves CLA3A+CLA76)の組み合わせも最高にかっこいい音になります。

 

9番のスロット

歪みを得やすいコンプレッサーを主に挿しています。パラレルコンプレッションが必要な場合にはNative Instruments Supercharger GT、DSPに余裕があればUAD Enpirical Lab Fatso Sr.を使います。

 

10番のスロット

ディエッサー(Waves RDeEsser)か、カット用のイコライザーとしては-30dBもカットできて低域の位相が乱れない(歪まない)ので Waves LinEQ Broad Bandを主に使います。整えるという意味ではWaves F6などのダイナミックイコライザーが最高なのですが、F6にはアナライザーがついておらず、iZotope EQはすごく重いので要所要所で、という感じですね。

 

11番のスロット

基本はWaves Vitamin で周波数帯域別のエンハンス処理とステレオイメージを同時に調整しますが、音にパンチが欲しい場合、前に出したいパートにはUAD API 550A、Pultech EQP-1Aを 、生楽器の高域を綺麗に持ち上げたいときはUAD Neve 1081などを使っています。

 

12番のスロット

フェーダー前のリミッターとして、Waves Smack Attack を固定で挿しています。トランジェントを調整しつつ完全にピークを抑えられるので非常に気に入っています。

ここまでが「プリフェーダー」で、13番以降のエフェクトをポストフェーダーにしています。

 

13番のスロット

空間系&揺らし系、フィルターなどのスロットです。ほとんどCLA Effectsで済んでしまいますが、Native Instruments GuitaRigの中のストンプエフェクトなども重宝します。

 

14番のスロット

こちらも空間系です。13番だけでは足りない場合にこちらを使います。

 

15番のスロット

サイドチェイン・コンプレッサー専用のスロットです。空間系の後にかける方がキレがいいのでこの順番です。RCompressorか、四つ打ちの曲限定ならNicky Romero Kick Start がオススメです。

 

16番のスロット

最後にステレオの広がりをここで調整するためにステレオイメージャーがきます。最後に挿すことで空間系のエフェクトも含めてステレオの幅を調整したり(Waves S1)、センターだけを無くしてボーカルやキックのスペースを空ける(Waves Center)といったこともできます。

 

Cubase9以前の8スロットしかない場合はこんな感じでした。今の16スロットに慣れるともう戻れないですね〜

インサートスロットが8スロットだけだったころ

 

 

Wavesは1年中セール状態なのでシグネチャーシリーズも、ほぼいつでも69〜99ドルの範囲で買えます。クリス・ロード・アルジとジャック・ジョセフ・プイグ、トニー・マセラティを揃えたらどんな楽器に対しても必ず8割以上完成させられます。

そしてシグネチャーシリーズに「あと一声!」という細かい調整が必要な場合、たいていはDAW付属のエフェクトだけで十分だったりします。特にStudio Oneは付属のエフェクトが非常に良くできているのでそう思います。

 

それではまた。